茂木 鈴(もぎ すず)公式



星をひとつもらっちゃったので、なんとかやってみる

コンテスト




 ジリジリと肌に照りつける太陽を鬱陶しそうに眺め、津村志乃は腕を組んで言い放った。

「わたしは出ないわよ!」

 海水浴場で開かれる水着コンテスト。

 その出場に、志乃はノーを突きつけた。

「そうは言うけどな、商品を見ろよ」

 久遠寺龍彦が指さす場所には、デカデカと『優勝 完熟マンゴー1箱』と書かれていた。

「マンゴーがなによ。そんなのわたしがいくらでも買ってあげるわよ」

「二位はパパイヤで三位はスイカだよ」

「だからなに?」

 矢羽根稔の言葉にも、志乃は心を動かされた様子はない。

「……仕方ない。リーダーとミヤにかけるしかないか」



 稔と龍彦が見つけてきたこの水着コンテスト。

 天文学的なお金を所持しているふたりにすれば、そこらの果物など、デパートで買い放題である。

 それどころか、惑星チャンスには人類がまだ一度も食べたことのないフルーツすら存在している。

 しかし……とふたりは思う。

 数多の難関を乗り越えて手に入れるからこそ、価値があるのだと。


「海で水着コンテスト……なんとしても賞品を手に入れないとね」

「ああ……万難を排してでも手に入れてみせるぜ」

 珍しくやる気をみせる稔と龍彦だったが、もちろんふたりは出場する権利はない。

 これはれっきとした女性限定のイベントなのだ。

「しかたない。奴らに頼むか」

「それしかないみたいだねね」

 ふたりは、パラソルの下で休憩している仲間たちの元へ向かった。

「いいぜ」

「ん」

 稔が阿賀野冴と高天原ミヤに依頼したところ、あっさりとオーケーが出た。

「どこでやってるんだ?」

「海の家の並びに空きスペースがあって、そこにステージを組んであるから、きっとそこだと思う」

「よっしゃ。いっちょ荒らしてくるか」

 冴はミヤを連れて上機嫌で向かっていった。

 ……が、ミヤだけが帰ってきた。

「どうしたんだ、ミヤ?」

 無言で指さす場所には、『午前中開催 未成年の部』と書かれていた。

「間違えられたのか」

「ん」

 こんなところに身分証を持ってきていない。

 年齢確認できないことから、明らかに未成年と分かる人は弾かれたようだ。

「残念だったな、ミヤ」

「ん」

 ミヤはそれほど残念でもなさそうな顔をした。未成年に間違われたのが微妙に嬉しいのだろうか。



 コンテストは自己紹介から水着の審査、特技の披露と順調に進み、最後は場所をステージから砂浜に移しての宝探しとなった。

『砂の中に隠された封筒を見つけて、そこに書かれているクイズに答えた人からポイントが入ります。ただし、砂浜にはわが町のゆるキャラ、イソゴカイくんが待ち受けています。気をつけて下さいね!』

 両手にゴカイを模したゆるキャラが八人ばかりうごめいていた。

 砂浜には一角だけ顔をのぞかせた封筒が見える。

 あれを持って司会者のところへ向かうらしい。

「なんだありゃ。町をアピールする気がないだろ。イソゴカイなんて、どの層を狙ってるんだ?」

「釣り人……とか?」

 稔や龍彦だけでなく、集まった観客たちもドン引きである。

『でははじめー!』

「うぉおおおお」

 開始の合図ととも冴が走りだし、砂の中に埋もれた封筒を……狙わず、イソゴカイくんに狙いを定めた。

 ――パァン

 小気味よい音を響かせ、冴はイソゴカイくんに腹パンをする。

 ウレタンでは海水を吸ってマズイと判断したのだろうか。

 イソゴカイくんの全身は、厚手のビニール素材でできていた。

「次だぜ!」

 冴は二体目に駆け寄り腹パンをする。

 冴の膂力である。

 イソゴカイくんの身体はあっさりと宙に浮く。

 悶絶する二体目に目もくれず、三体目に向かったところで稔は気づいた。

「目的忘れているね」

「……ああ、悲しいことにな」

 結果、すべてのイソゴカイくんを倒していい笑顔を見せる冴だったが、その頃には他の参加者はみんな封筒を持って並んでいた。

 もちろん、優勝どころか三位のスイカすらもらえなかった。