茂木 鈴(もぎ すず)公式



お人好しが、異世界で一旗揚げますん




*大陸地図*






他国との交流は、商人が行き来する程度で、一般の人は国外まで出て行ったりしません。
大きな町ならば交易商人や交易品も多くなりますが、隣国にいくには何日も町や村のない場所を移動する必要があります。

途中、魔物が徘徊していることもあるので、一般の人はあまり危険を冒したりしない感じです。
ただし、商人も一般人も自衛のために戦う力を持っています。






大きさ








地理解説




■未開地帯

未開地帯もまた、大陸にある三大難所のひとつである。この三大難所は、どこの国にも属していない。
大陸の北部すべてを覆うようにして存在している。人跡未踏の面積でいえば、ここが一番広いであろう。
その名の通り、未開どころか、いまだ人の手が入っていない場所ばかりである。ゆえに中の詳細はほとんど分かっていない
というのも、この広大は森林には、あまりに多くの魔物が棲息しており、人の侵入をずっと拒んできたからである。
ミルドラルやロスフィール帝国では、未開地帯から流れてくる魔物の対処で、毎年多額の資金が費やされ、多くの人命が失われている。
とくにロスフィール帝国では、過去何度も「未開地帯探索隊」を派遣したが、いずれも小さな成功すら収めていない。
ただし、帝国は長年の忍耐強い攻略によって、未開地帯と接する地の木を伐採し、ほんの少しでも未開部分を押し上げようという試みがなされてきた。
それによって、百数十平方キロメートルほど領土の拡張に成功したが、それに費やした労力と資金は相当であった。
現在は、未開部分を押し上げていく作戦は採用されていない。
反対にミルドラルのフィーネ公は、帝国と同じように未開部分を押し上げる政策を打ち出し、ここ数年、予算をつけて取り組んできた。
だがいまだ目に見える成果は現れておらず、予算を徒に消費する結果となっている。
つまり未開地帯はいつまで経っても未開地帯なのである。



■デルギスタン砂漠

デルギスタン砂漠は、大陸の三大難所には数えられていない。
この不毛な砂漠がなぜ、難所として数えられていないのか。
それは砂漠に住まう一族が存在しているからである。
砂漠で生活している者たちがいるのだから、難所である必要が無いというのが、その理由である。
デルギスタン砂漠はエルヴァル王国の南に位置し、どこからが砂漠であるのか、明確な境界線が存在しない。
王国から南に向かうと、草原から荒れ地、ときには湿地が続くことになる。
徐々に人が住むのに適さない地が現れてくる。そして徐々に大地が白っぽくなり、砂交じりの大地が顔を覗かせる。
一説には、その周辺も含めてデルギスタン砂漠と呼ぶこともあるらしい。
ただ一般的には、深く掘っても砂しか出てこないようになった辺りから、デルギスタン砂漠と呼んでいる。
その頃になると一面が砂で覆われていることになる。
デルギスタン砂漠は南に行くほど細くくびれるような形になっている。デルギスタン砂漠は大陸から突出しているため、南回りの船泣かせとも言われている。
というのも、この砂漠の半島がなければ、船による東西の交流も、十日は短縮されると思われているからである。
大陸外周の大部分は切り立った崖に覆われている。
唯一の例外がこのデルギスタン砂漠がある一帯である。だが、ここへ船をつけることは適わない。
遠浅の砂浜になっているのである。小舟のボートならばまだしも、大型船が砂の上に乗り上げてしまった場合、そこで立ち往生してしまう。
ゆえに商船はこのデルギスタン砂漠付近には一切近寄らないことが暗黙の了解となっている。
時折、風に煽られたのか、遠浅海岸に乗り上げて身動きとれなくなってしまった船の残骸を見ることが出来る。
船乗りたちは決してそれより陸に近づこうとしないのだ。
デルギスタン砂漠に住む一族は大別して二つ存在している。
北部に住むシュテール族と南部に住むエルヘイム族である。
シュテール族は砂漠の一番細い|くびれ《・・・》から北側、エルヘイム族はそこから南側に住んでいる。
デルギスタン砂漠があまりに広いため、両種族ともに交流はない。
シュテール族はまだエルヴァル王国などから交易商人がやってくるが、エルヘイム族の住む集落へ砂漠を越えてやってくる者は皆無である。
よって、エルヘイム族の習性はほとんど知られていない。
この両種族とも国という単位を持っておらず、この砂漠はどこの国にも属していない。
ゆえにこのふたつの種族以外にも国を追われた者が勝手にやってきて住み着くこともあるが、大抵は長続きしない。
同じように、砂漠の魔物を狩るためにわざわざやってくる者もいる。そういった者たちは砂漠と凶獣の森の中間地点に拠点を構える事が多い。
視界一面、砂漠地帯のただ中にいると、自分の位置を見失う恐れがあるかららしい。
デルギスタン砂漠の最西端には、鬱蒼(うっそう)と繁る木々の森が存在している。……が、魔物の宝庫であるため、だれも近寄らない。一説には、G5の魔物も数多く存在しているとかいないとか。



■絶断山脈

絶断山脈は、大陸にある三大難所のひとつである。
これは大陸の中央にそびえ立つ山々の連なりであり、人を寄せ付けない場所である。人跡未踏の地を数多く残している。
山頂はあまりに高く、何の備えのない人では登頂することが不可能であると言われている。
標高8000メートルから15000メートルくらいの山が何十と存在しており、大陸を西と東に分ける所以となった。
絶断山脈は南にいくと二手に分かれている。
西側の山脈は砂漠の直近まで続いており、エルヴァル王国の東進を阻むものとなっている。
ただし、凶獣の森から出てくるG5やG4の魔物はこの絶断山脈によって押しとどめられており、山脈のおかげで人類の生存域が広がっているとも言える。
逆に東側はそのまま海岸線近くまで進出しており、凶獣の森を覆い尽くすほど広がっている。
海岸線と唯一山脈が及ばない場所が存在し、過去何度か東側の国がそこから凶獣の森へと探索を行った経緯がある。
ただしいまは、『英雄の門』をはじめとした三つの門がそれを阻んでいる。
このように絶断山脈は、人の行き来を阻害する天然の要塞となっているが、そのおかげで、東西の国々は直接争うことがほとんどなかったと言える。
現在、絶断山脈を使って東西を行き来する試みは、唯一の例外を除いて、成功していない。
標高一万メートルにもおよぶ山の連なりを越えることは、只人には不可能なことである。
西のラマ国首都であるボスワンは、この絶断山脈の中腹にある。
ボスワンの後ろには絶断山脈がそびえているが、ただ一本だけ山脈を越えるルートが発見されている。
過去そのルートを通ってロスフィール帝国側から軍勢がやってきたが、いずれも侵略には失敗している。
それほど絶断山脈を越えるのは並大抵のことではないのである。
また絶断山脈のそこかしこに、山岳特有の魔物が徘徊しており、不用意に足を踏み入れた者たちは、例外なく魔物に襲われ、命を失っている。
ただの登山装備だけでこの山を越えるのは、魔物の量からいっても、不可能であると意見は一致している。



■凶獣の森

凶獣の森は、大陸にある三大難所のひとつである。
ここはかつて「南の未開地帯」と呼ばれていた場所である。
面積こそ北の未開地帯より狭いが、ここにはG5の魔物も多く、とくに凶暴な魔物が多数発見されている。
南と北の未開地帯で、でどうしてこう出現する魔物が違うのかと議論されることがあるが、いまだその結論が出されたことはない。
この南の未開地帯ではG4やG5の魔物が多数棲息していることから、過去に魔物が進化している。
G5の魔物が進化すると『凶獣(きょうじゅう)』と呼ばれるようになり、国ひとつが凶獣によって壊滅することもある。
というのも、通常の魔物はかなり好き勝手に移動することはあるものの、テリトリーはほぼ決まっている。
そこから出てくる魔物も多く、対処は大変であるが、それはこの世界で生きていく以上、仕方が無いことといえる。
だが凶獣は違う。凶獣だけは、テリトリーをもたず、大陸獣を縦横無尽に動き回るのである。
数百年前、東へ向かった凶獣は多くの犠牲を出して討伐された。
それいこう、G4やG5の魔物の多いこの南の未開地帯を監視するために『英雄の門』が設置され、南の未開地帯も『凶獣の森』と呼び名を変えることになった。
それだけ凶獣の出現は、人類にとって大きな出来事、凶事なのである。
凶獣がなぜ出現するのかは、まだ分かっていないが、一説には魔物どうしが戦い、それを繰り返すことによって徐々に進化への階段を上っていくのではと言われている。
そこで、G4やG5の魔物が多数棲息するこの場所を、戒めを込めて凶獣の森と呼ぶようになったのである。
北にある未開地帯よりも、グレードの高い魔物が多いことから、一攫千金を狙った魔物ハンターたちが多数森の中へ入っていったが、多くは志し半ばで倒れている。
あまりに被害が多いからか、凶獣の森ではこんな伝説がまことしやかに語られている。
凶獣の森では、優秀な剣士と同じく優秀な魔道士たちが集団で暮らしており、そこでは日夜魔物を狩って生活している。
ときどき素材を換金するため凶獣の森を出てくることがあるという。
ただし、凶獣の森の中で、そのようなキャンプ地が発見されたという情報は、いまだない。



■英雄の門

かつてそこは何もない平野だった。南は海で、海岸線は近かった。
北には絶断山脈の終わりが見えていた。その平野の長さは二キロメートルほど。決して短い距離ではないが、絶望的に長い距離でもない。
じつはここに、三つの門が設置されたのである。
原因は凶獣の出現。凶獣の森は昔、南の未開地帯と呼ばれていた。そこで魔物が進化し、凶獣となった。
ひとたび魔物が凶獣となると、もう魔物はテリトリーを持つことをせず、かなり長距離を移動するようになる。
現れた凶獣は退治されたものの、「もし次にでてきたらどうしよう」という不安がよぎったとしても、だれが責められようか。凶獣が出現するだけで、町どころか、国だって落ちるのである。
それを回避するためには、凶獣を物理的に閉じ込めてしまえばいい。そう思ったロスフィール帝国は、さきの平野に巨大な門を設置した。
凶獣が乗り越えられないほど高く、また凶獣が破壊できないほど厚く。そんな門を十年かけて作り上げたのである。
凶獣の森に近い方から順に『英雄の門』『第二の門』『第三の門』と呼ぶ。
なぜ『第一の門』と呼ばないかといえば、ここに門を設置したことで、凶獣が東の国に行ってしまわないかと懸念したからである。
有識者の見解では、「そのようなことはあり得る」というものだった。よってそれによる悪感情を少しでも減らそうとして、『第一の門』ではなく、『英雄の門』としたのである。
ちなみに英雄とは、帝国の英雄デテルリードのことである。
ここを揉んで壊したため、
かの英雄の名前を出したことで、抗議の矛先を反らしておこうという狙いがあったらしい。
もし凶獣の森から、再度凶獣が生まれたら、北は山脈、南は海岸。西は門があるため、凶獣は西から出て行ってしまう。その時の非難を躱すため、わざと勇敢な名前をつけたのである。
ちなみに英雄の『門』とうたっているが、門がそこにあるわけではない。壁である。
なにしろ、魔獣の侵入を防ぐために設置してあるため、行き来はあまり想定されていない。
それでも人が通れるくらいの小さな門は設置されている。その程度である。また、細く長い階段を使って上り下りすることもできる。階段は一度門の上部までいき、そこから下に降りるようになっている。
なぜ階段がついているのかとえいば、壁の上に立って、凶獣の森を監視するからである。
英雄の門は、凶獣だけでなく大型魔物の侵入を防いでおり、その有用性は帝国の者ならば、誰でも認めることである。
過去、何度も蛮勇を誇った者がこの英雄の門を通り、凶獣の森へ赴いたが、何かを成し遂げて帰ってきたという報告はない。
ほとんどが逃げ帰り、いくばくかの肉や皮、魔石などを持ち帰ったくらいである。
G5の魔獣が落とすコインを狙うには、この英雄の門を通過して、凶獣の森を延々と進む必要があるが、他の出現場所を狙った方がまだ安全と言われているため、コイン狙いで英雄の門をくぐる者は、意外と少ないのが現状である。






〜国解説〜



■ミルドラル

西方諸国の北にある国。
三公と呼ばれる三つの家の合議制で国が運営されている。
各公の所領する土地がそれぞれあり、国全体のことを決めるとき、三公が一堂に集まる。
各公で独自の軍隊を持ち、法律も異なる。
国の運営方法は共和国制や、連合国制に近い。


・フィーネ公(三公の一つ)

ミルドラルの北部一帯を任されている最大面積を誇る公家(こうけ)。
この地の北は未開地帯であるため、魔物との戦いが絶えることはない。三公の中だと、実戦経験が豊富で精強な兵が多い。
対魔物の戦費が膨大していることが悩みの種。
【スミスロンの町】にフィーネ公が住んでいる。


・トエルザード公(三公の一つ)

ミルドラルにただ一つしかない港【バイラル港】を持っている。巨大な三艘の船を所有し、帝国やエルヴァル王国と交易している。
比較的裕福な国だが、兵力はそれほど多くない。
【ラクージュの町】にトエルザード公が住んでいる。


・バイダル公(三公の一つ)

ミルドラルの中では絶断山脈よりにあり、ラマ国と領土を接している。
ミルドラル最大の町である、【ウイッシュトンの町】がある。ここは交易の要所でり、ミルドラル、ラマ、エルヴァル王国の商人が訪れている。
兵は屈強。ラマ国がロスフィール帝国に敗れた場合、この町が戦場になる。
各町は周囲を高い壁で覆って、戦いに備えている。
【ウィッシュトンの町】にバイダル公が住んでいる。


■ラマ国

絶断(ぜつだん)山脈の中腹にある国。
国土は狭く、産業もそれほど発達していない。
【首都ボスワン】までの道中、山脈に魔物がよく出るため、精強な兵が多い。
優秀な将軍を過去多数輩出している。
絶断山脈に居を構える山岳民族もいるが、これも広義でラマ国民として扱われている。



■エルヴァル王国

商業国家で、国王は商会の会長を兼務している。
【アーロンス港】と【エルダリア港】の二つを持つ。
【王都クリパニア】は優雅で洗練された都市として有名。
産業も経済も発達しているが、海軍に比べて、陸戦の兵は弱いと言われている。
海軍に力を入れている。


■ロスフィール帝国

複数の小国家を併呑した。
ただし、いまだ解放軍が戦っている。内乱状態。
帝国中央部(やや西寄り)に【バアヌ湖】があり、それを囲むようにして北の【トラウス】西の【メルエット】東の【グノージュ】地方がある。この三地方はバアヌ湖を中心としたバアヌ圏とする。
絶断山脈寄りに【ロイスマリナ】と【ニルブリア】があり、東の海側に【ヒットミア】【バッタリア】【ティオーヌ】がある。バッタリアに【ルード港】、ティオーヌに【ガリュガ港】を持つ。




ロスフィール帝国の歴史

■歴史 英雄王誕生まで

『南の未開地帯』にG5から進化した魔物が出現した。
 進化した魔物は『凶獣』と呼ばれ、複数の国家が協力して倒さねばならないほどの脅威となる。
 凶獣は決まったテリトリーを持たない。
 どこへ向かうかはだれも知らない。
 凶獣が向かった先は、すべて滅びる。出現は、まさに破滅と同義であった。

 そんな凶獣が向かった先は東。
 慌てたのは、東の諸国群である。

 一致団結して凶獣を滅ぼさない限り、自分たちに未来はない。
 各国から選りすぐりの者たちで構成された混成軍を立ち上げ、凶獣との長い戦いが始まった。
 多くの死者を出したその戦いは、混成軍の勝利で幕を閉じた。
 そのとき、混成軍の中でもっとも活躍したのが、英雄デテルリードである。
 凶獣に止めを刺した彼は、一躍時の人となった。

 弱冠21歳の若き英雄デテルリードは、メルエット国の出身である。
 祖国の町は最初に凶獣が出現したときに失われている。
 時のメルエット国王ザーデンは最初、デテルリードを讃えた。
 自国から出現した英雄の存在を喜んだ。
 だが凶獣の脅威がなくなると、猜疑心の強いザーデン国王は、次第に英雄デテルリードの存在を疎ましく思うようになった。

 凶獣討伐からわずか3年で、デテルリードはメルエットから追放されることとなった。
 表向きの理由は、王族に対する不敬と自らの地位を笠に着た専横、公金の着服である。
 故国を追われたデテルリードは、北のトラウス国に亡命することになる。
 メルエット国、トラウス国、グノージュ国は、三国の中央にある巨大な湖、バアヌ湖を利用した湖上貿易で交流があった。
 トラウス国に迎え入れられたデテルリードは、王女と結婚。
 のちに王位を譲られてトラウス国王となる。

 英雄王の誕生である。



■歴史 統一王誕生まで

 英雄王の誕生は、メルエット国王にとって許容できるものではなかった。
 自らの狭量さを見せつけられたのである。
 ザーデン国王は、湖上貿易で交流が盛んな三国のうち、残りのグノージュ国を取りこんで、トラウス国を分割統治する案を提唱した。
『対英雄同盟』である。

 経済封鎖を行い、行き詰まったところに軍を派遣する。
 二国が手を組めば、国力で劣るトラウス国など、併呑は容易い。
 両国はトラウス国戦役を想定して活動を始めた。
 だがそれが効果を現すより早く、トラウス国……英雄王デテルリードは、反撃の狼煙をあげた。
 デテルリードが王となってより、猜疑心の強いザーデン王がそのまま座しているわけがないのである。
 必ず手を打ってくる。
 そう考えておいたデテルリードは、かつての祖国にいる同盟者に連絡を取り、王の動向を探らせていたのである。

 ――今こそ反撃のときである

 その言葉通り、デテルリードはメルエット国に電撃戦を仕掛け、瞬く間に首都を包囲した。
 徹底抗戦を唱えるザーデン国王とは裏腹に、王都の市民たちは門を開け、デテルリードを招き入れたのである。
 首都を包囲してから、わずか数日で陥落してしまった。
 返す刀でグノージュ国へ進軍。
 すでにメルエット国が落ちた事実は、衝撃を持って受け入れられた。
 意見の割れるグノージュ国重鎮たちをよそに、デテルリードは快進撃を続け、次々と都市を落としていく。
 結局グノージュ国は、援軍のアテがないまま籠城戦を選択し、ついには降伏する運びとなった。
 バアヌ湖を中心とした三国はひとつの国になり、英雄王デテルリードは、『統一王』と呼ばれるようになった。



■歴史 帝国始動まで

 デテルリードの治世によって、統一国トラウスは繁栄を続けた。それは70歳でデテルリードが没するまで続く。
 初代統一王デテルリードから数えて三代目の王ユーラルは、東方諸国を支配下に置き、真の統一王となる野望をみせた。
 東方諸国において、一番の繁栄を享受していた統一国トラウスであるが、残りの国すべてを敵に回すには、些か力が足らなかった。
 配下を各地に派遣して、各地に戦乱の世を作り出したユーラルは、後に『混沌王』と呼ばれることになる。
 混沌王から数えて三代目、ナディール王の御代になってはじめて東方諸国の統一が具体性を帯びてきた。

 当時、統一国トラウト以外で五つの国が存在し、そのうち二つまでも支配下に組み入れていた。
 残り三国のうち一国でも倒れれば、情勢は一気に傾くとまで言われていた。
 そのせいか、三国の抵抗は凄まじく、さすがのナディールも当代で東方統一はなし得なかった。
 実際に東方諸国を統一したのは、ナディールの息子であるストローダ王である。
 では彼は『真の統一王』と呼ばれるかと言えば、そうではない。
 歴史では『暗愚王』という名が残っている。

 東方諸国統一を成し遂げたストローダ王は、その食指を西方にまで向けた。
 絶断山脈越えを敢行したのである。
 絶断山脈は、大陸を縦に分断している高い山の連なりであり、これを軍で越えることは不可能と言われていた。
 案の定、多くの脱落者を出しつつ山脈越えを行ったものの、戦闘継続能力は著しく欠け、そこで待ち構えていた西方の軍隊に蹴散らされることとなった。
 ストローダ王もその時、命を落としている。
 この絶断山脈越えによる敗戦と王の死によって、統一したばかりの東方はまたもや乱れた。
 ストローダ王の死を受けて、息子のサイクロイドが王位を継いだ。
 サイクロイド王は無能ではなかった。
 各地でおこった叛乱の鎮圧とともに、大規模な政治的改革を断行することにした。
 これまで中央集権体勢を敷いていたことで、身動きがとれなくなっていた部分を改めさせた。
 地方にもある程度の決裁権を与えた『分権政治』を確立させ、その代わり任命権を押さえることにした。
 国名もロスフィール帝国と改めたのもこのときである。

 初代皇帝サイクロイドが誕生した。

 英雄王デテルリードが最初に治めた三国、トラウス国、メルエット国、グノージュ国は、中央にある湖の名を冠してバアヌ圏とした。
 ここは皇帝の直轄地である。
 また他の五国があった地をそれぞれ五領として、一圏五領の体制を作り上げた。
 これがロスフィール帝国の始まりである。



■歴史 現在まで

 英雄王デテルリードの時代から数百年。
 ようやく一圏五領のロスフィール帝国が産声をあげた。
 ただし、そこからの帝国の歴史は平坦ではなかった。
 帝国が地方分権を認めたのは、国があまりに大きくなりすぎたからである。
 情報の伝達に何日もかかるようでは、火急の事態に対応できない。
 帝国の支配から脱しようとする者たちは、それを上手く使うことができる。
 反乱軍、解放軍、抵抗軍……名は数あれど、やっていることは同じである。

 帝国の支配のくびきから脱しようと、地下で集まり、ゲリラ活動をし、レジスタンスとして帝国を悩ますことになった。
 これより百年、帝国はレジスタンス活動の鎮圧に手を焼かされることとなる。
 それを裏で支援しているのが西方のエルヴァル王国であり、交易と支援という、表裏一体の活動で、帝国をコントロールしていた。
 もちろん、帝国もまだ大陸統一の夢を諦めていない。
 絶断山脈のどこを攻めれば、西方への足がかりができるのか、調査に余念がなかった。

 唯一見つけたのが、西方のラマ国が押さえている山道である。
 絶断山脈の中でも、比較的低所にある場所を使えば、帝国側からでも、西方側からでも行き来が可能となる道が存在している。
 過去何度か、帝国はその山道を使って侵攻を試みている。
 だがいまだラマ国の防衛を突破できていない。
 足下に叛乱の火が燻っている状態では、大規模派兵ができないのである。
 ラマ国の守りの要であるライエル将軍が老齢となったいま、一気に西方へ侵攻できる契機が到来したといえる。